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新企画「福いいナー!をさがせ!」始まります

 福いいネ!くんの相棒「福いいヌ!」は、福いいネ!なニオイが大好き。その鋭い嗅覚で、福井のまちにあふれる福いいネ!を探し出すのが大得意です。

 福井には、思わず「福いいネ!」と声を上げたくなるような、すばらしい人たちがたくさんいます。みんな知ってる著名人だけでなく、中には、知る人ぞ知る逸材も!
 そこで、福いいヌ!の鼻を頼りに、福井でがんばっている人、活躍している人を探し出し、皆さんに紹介していく新企画を始めます。題して、福いいナー!(=福いいネ!な人)をさがせ!

 第一回は、立松栄治さんを紹介します。

#01 立松栄治さん

真ちゅうの薄い板が、まるで自ら動いているかのように姿を変えていく。名工のよどみのない手さばきは軽やかで、時を忘れて見入ってしまう
ほどなく完成したのは「折り鶴」。遠目には、紙で作られたものと見まがうばかりのしなやかさだが、確かに金属でできている。ほれぼれする腕前だ


 有限会社立松ダクト工業代表の立松栄治さんは、建築板金の業界で50年以上、福井の第一線で活躍してきたベテランの職人です。

 建築板金一級技能士(内外装・ダクト)、二級管工事施工管理技士などの資格を持ち、平成29年度に「卓越した技能者(現代の名工)」として厚生労働大臣表彰、30年には黄綬褒章を受章するなど、その技術と活動は高い評価を受けています。

 板金とは、薄い板状の金属を加工して立体的な形をつくり出す技術。立松さんは、ビルや大型施設などで換気や空調を行うための空気の通り道である「ダクト」の製作・施工が専門です。
 これまで、サンドーム福井や福井県立図書館、福井県立恐竜博物館など、福井の名だたる公共施設の設備も担ってきました。

 設計をした上で金属の板を切断、接合するために折り曲げて成型加工し、最後にそれぞれの部品を組み立てて、ダクトは完成します。
 かつては全てが手作業でしたが、現在では、その多くの工程をコンピューターや電動機械を用いて行うことができます。

 しかし、ねじりながら高さを変えるなどの複雑な形状のものになると、機械では対応できないため、昔ながらの手作業で行わなければなりません。
 そのような特殊なダクトを製作できる職人は日本全国でも少なく、立松さんのところには、県外からの発注や相談が来ることもしばしば。
 機械化が進み、AIなどの最新技術がもてはやされる現代でも、人の手によってしか作ることのできないものがあるのです。

 立松さんにこの職業を選んだ理由を尋ねると、「若いころは単純にお金を稼ぎたかったから」だと笑って答えてくれました。
 まちで大きなビルの建設が相次ぎ、建築・設備工事の仕事が求められていた時代でした。今に比べて多くの人が業界に入ってきて活気があったと言います。

 立松さんは、「お金をいただいて仕事を引き受ける以上は、その価値に見合ったもの以上の仕事をしなくてはならない」を自らの信条にしてきたといいます。それを達成するために、技術向上のたゆまぬ努力を積み重ねること。自社の社員にもそのように指導してきました。

 自身の高い技術力で福井の建築設備を支えてきただけでなく、板金技術を後世に残すため、後進の育成にも力を注いできた立松さん。福井県の職業訓練校での指導員、技能検定の講師などを歴任し、自社の社員だけでなく、同じ業界で働く若い人たちにも、長年にわたり技術を伝えてきました。

 近年は、至民中学校の職業体験を受け入れ、中学生にも技術を教えています。
 「自分の手で何かを作り上げたときに感じる喜びは、子どもも大人もみな共通。できあがったときに、ニヤリ、となんとも嬉しそうな顔をする」。そうした若い人たちのからの反応や手応えが、これまで立松さんの原動力になってきたと言います。 

 冒頭、私たちに披露してくれた金属を使った折り鶴づくりも、一般の人にものづくりの楽しさや大切さを感じてもらうために立松さんが考え出したプログラム。全国技能士会連合会マイスターとして、これまでさまざまなイベントや会場に出店し、人気を博してきたそうです。

 立松さんがこの仕事に就いたころとは環境が変わり、とくにここ10年、板金などの職人を志す若手がかなり減ったそうです。
 「自分のような職人がいなくなってしまったら、昔ながらのよい建物を建てることはできなくなる」と将来を危惧します。

 ダクトがなければ、人は建物の中で呼吸できず、活動することはできません。電気や水道なども同様になくてはならない設備です。
 立松さんは、若者たちによく「君たちは、きれいな空気がなくても生きていけるか?」と問いかけるそうです。そうすると、皆、はっと気付いたような表情になると言います。
 「当たり前」のようにそこにある空気や水、電気は、決して当たり前ではなく、誰かの技術と努力によって支えられています。

 職業体験に訪れた中学生や、イベントで折り鶴をつくった子どもたちが、そうした手作りの面白さと仕事の価値に気づいて、どんな分野でもいい、技術で社会を支える職業を志してくれれば、立松さんはそう願います。

 「設備工事のような仕事は、最近では『3K(きつい、汚い、危険)』などと言われて敬遠されるが、人が生きていくためになくてはならない価値を作る誇るべき仕事。それを皆さんに伝えるため、今後も活動を続けていきたい」と、力強く話してくれました。

「福いいナー!をさがせ!」は動画でもご覧いただけます


今回は「西行市長がおじゃまします」とのコラボ企画です!

 西行市長が福井市のさまざまな場所を訪れ、市民の皆さんと直接コミュニケーションを深める新たな取り組み「西行市長がおじゃまします」。

 今回は、「福いいナー!をさがせ!」と「西行市長がおじゃまします」のコラボレーション企画として、取材には西行市長とともに伺いました。

 立松さんからは、「福井の職人たちが築いてきた技術の蓄積がこのままでは失われてしまう」という切実な問題意識のもと、現場の現状や課題について詳しくお話をうかがうことができました。
 そして、貴重な技術を伝承していくための啓発、教育の機会をもっと拡充すべき、といったさまざまなご意見もいただきました。

 お聞かせいただいた貴重なお話、ご意見は、今後の市政にしっかりと反映してまいります。お忙しい中、ご協力いただいた立松ダクト工業の皆さん、まことにありがとうございました。

「西行市長がおじゃまします」の様子は、福井市のX(旧Twitter)、Instagram、YouTubeなどで発信していきます。ぜひご覧ください。



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