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「福いいナー!をさがせ!」#07 福井大学事務局企画力向上プロジェクトチーム(JKK)

 福いいネ!くんの相棒「福いいヌ!」は、福いいネ!なニオイが大好き。その鋭い嗅覚で、福井のまちにあふれる福いいネ!を探し出すのが大得意です。

 福井には、思わず「福いいネ!」と声を上げたくなるような、すばらしい人たちがたくさんいます。みんな知ってる著名人だけでなく、中には、知る人ぞ知る逸材も!
 そこで、福いいヌ!の鼻を頼りに、福井でがんばっている人、活躍している人を探し出し、皆さんに紹介していく新企画を始めました。題して、福いいナー!(=福いいネ!な人)をさがせ!

 第七回は、福井大学事務局企画力向上プロジェクトチーム(JKK)を紹介します。 

#07 福井大学事務局企画力向上プロジェクトチーム(JKK)

 10/19(土)の夜、足羽山の三段広場で開催された「足羽山ランタンナイト2024」。竹で作られたランタン約150個が夜の足羽山を彩り、親子連れなどが訪れました。

 このイベント、実は、福井大学の若手職員・学生が、足羽山に店を構える事業者らでつくる「一般社団法人足羽山こどもとあそぶLab」と協働で企画したものです。

 なぜ、大学で働く職員の皆さんがこのようなイベントを行っているのでしょうか。今回の福いいナー!をさがせ!では地域の課題解決のため、熱い思いを持って活動している、福井大学の若手職員のチームに焦点を当てます。

「足羽山ランタンナイト2024」のミーティングの様子

 福井大学事務局企画力向上プロジェクトチーム、通称「J(事務局)K(企画力)K(向上)」は、観光資源の活用や多文化共生など、地域における課題を大学職員が主体的に福井県内の各自治体や団体などに積極的に働きかけ、地域の課題を抽出し、教員・学生と連携してその解決を目指す取り組みです。
 20~40代のさまざまな部署の若手職員を中心に15人ほどのメンバーで構成され、複数のチームに分かれて活動しています。

「足羽山ランタンナイト2024」のミーティング中の増田さん

 その中の一つが、今回の「足羽山ランタンナイト2024」を企画した「足羽山チーム」です。そのリーダーを務める、大学職員歴9年目の増田紗頼(さら)さんは、普段は国際課の職員として、学生の海外留学や外国人留学生受け入れ時のサポート、海外の大学との国際交流に関する手続きなどを行っています。

海外の大学と英語でメールのやり取りをする増田さん

 増田さんがJKKに参加したきっかけは、「面白い若手職員が集まって、何か楽しいことができると思ったから」。令和4年にJKKのメンバーを公募していることを知り、自ら手を挙げました。

活動拠点の足羽山

 JKKが活動テーマを探しているとき、偶然にも福井大学に足羽山の事業者が訪れ、「若い人にもっと足羽山を楽しんでほしい」という相談を持ちかけてきました。足羽山の現状や課題を聞き、検討を重ねる中で「自分たちの活動が課題解決につながるのでは」と、活動拠点を足羽山とするチームを立ち上げることになったそうです。
 イベント参加者がSNSに投稿して「バズる(=話題になる)」ことを期待し、「足羽山をバズらせる!プロジェクト」と命名しました。

 増田さん自身、「足羽山は、家族で楽しめる施設やイベントは充実しているが、Z世代と呼ばれる若者はあまり見かけない。かつて母から『足羽山は、着物を着ておめかしして行く場所だった』と聞かされたことがあり、足羽山を若者がおしゃれして出かけるような場所として復活させたい」という思いがずっとあったと言います。

「足羽山をバズらせる!プロジェクト」の1年目に実施した「ランタンナイト」(令和5年11月)。ランタンには、カラフルな電球が灯っている

 今年の10/19に行われたランタンナイトは、「足羽山をバズらせる!プロジェクト」の2年目の企画です。
 「朝や昼は、ウォーキングに来た人や家族連れなどでにぎわっているが、夜の人出はほとんどない」という足羽山の課題の一つを解決したいという思いで、夜の足羽山ににぎわいを生み出す「ランタンナイト」を2年連続で企画しました。
 1年目は、木や防水の和紙でランタンを制作しましたが、2年目は足羽山に生えている竹を材料に選びました。
 「この活動の中で地域の人に教えてもらった『足羽山の廃竹林』の問題を、多くの人に知ってほしいと思った」と増田さんは話します。

 「廃竹林」とは、間伐などの管理がされず、放置された状態の竹林のことを指します。資材としての竹の需要が大幅に減ったことや、高齢化などで竹林を管理する人がいなくなったことなどが原因と言われ、放置すると元来の植生を脅かしたり土砂災害を引き起こしたりする危険性があります。
 「足羽山周辺は城下町で、人の暮らしの中に竹の需要があった。しかし、現代では竹に代わる材料が次々登場し、需要が減り、廃竹林が増えている。こんな課題を抱えていることを、活動を通して知った」と増田さんは振り返ります。

足羽山の竹林整備に参加する職員・学生

 足羽山では、福井市や市民、企業らで組織された「足羽三山のSATOYAMAを守る会」が定期的に竹林整備を行っています。その竹林整備に職員と学生が参加し、伐採した竹をランタンに利活用しました。 
 「竹を整備して廃棄して終わりではなく、地域の資源として活用する。福井大学に就職したとき、まさかのこぎりで竹を切ることになるなんて思っていなかったけど」と増田さんはほほ笑みます。

 ランタンナイトの当日は残念ながら雨が降りましたが、チラシなどを見た家族連れが会場の三段広場を訪れ、竹から漏れる暖かい明かりをのぞき込んだり、写真を撮ったりして楽しんでいました。
 来場者の1人は「普段、夜に足羽山へ行こうという発想にはならないけど、このようなイベントがあれば行ってみようかなと思う。夜景もきれいだし、夜の足羽山も結構いいかも」とイベントをきっかけに、夜の足羽山の魅力に気付いたようでした。

竹ランタンを並べる学生と職員
足羽山をバズらせる!プロジェクトに参加している学生たち

 「足羽山をバズらせる!プロジェクト」には、学内の公募で集まった8人の学生も関わっています。
 その中の1人、大学院生の吉田憲人さんは「授業の一環で地域と関わることはあったが、今回のように単位などの評価と関係なく主体的に地域と関わるのは初めて。参加している学生は自由に、そしてこんなにも自然体で過ごせる。地域の方も同じように自然体で関わってくれるので、距離も近く感じる。職員の皆さんが私たち学生の意見をたくさん聞いてくれて活動内容に反映させてくれるので、とてもやりがいがある」と楽しく活動に参加していることを教えてくれました。

 この活動に参加するまでは、職員とは学内で事務的な話をするだけだったと言います。活動を通して「職員とのコミュニケーションが生まれ、大学生活がより楽しくなった」と参加した学生たち3人は口々に話します。

竹ランタンに刻まれた「福井大学×足羽山」の文字

 竹ランタンの一つ一つにレーザーカッターで「福井大学×足羽山」の文字を刻もうと提案したのは学生たちでした。株式会社ソリッドラボが運営するものづくり工房「トンカンテラス」を訪ね、竹ランタンへの熱い思いを伝えることで、協力してもらい実現したそうです。

 学生たちの独創的なアイデアや熱意には、常に驚かされ、パワーをもらっているという増田さん。
「大人だと妥協してしまいそうなところも、学生はとことんこだわってより良いものを作ろうとする。その姿勢に学ぶべきところが多い」

 職員と学生。普段は学内の限られた場面でしか関わらない二者が、地域に出て活動する中で、互いの存在を大切に思い、良い関係を築いていることが伝わってきます。

 今年で2年目となる足羽山ランタンナイト。「来年はこうしたらどうか」と地域の人がアドバイスをくれたり、「一緒にやりたい」と事業者が声をかけてくれたり、少しずつ活動の認知度が上がっていることをうれしく思っているという増田さん。
 「ランタンの明かりが足羽山の自然をより美しく見せてくれる。にぎわいの創出と足羽山の魅力の発信にぴったりの企画」と、この企画に手ごたえを感じ、「来年度以降も続けていけたら」と力強く話します。

 大学職員としての日々の中で、これまで地域と深く関わる機会はほとんどなかったという増田さん。「JKKの活動を通して、大学の周りではいろいろな課題があると知り、世界が広がった」と話します。

 「活動を通して足羽山の奥深さを感じている。大学の中だけで貢献するのではなく、自分が大切に思う地域にも貢献していきたい」と熱く語ってくれました。

JKK立ち上げメンバーの丹羽さん

 このような地域課題の解決に、教育や研究を本分とする大学の職員の皆さんが取り組んでいるのはどうしてなのでしょう。
 「実は10数年ほど前から福井大学は地域との連携に力を入れてきた」と話すのは、JKKの複数のチームを束ねるリーダーである丹羽英史朗さんです。丹羽さんは、増田さんたちから頼られている大学職員歴14年目の職員です。JKKの立ち上げメンバーの1人で、活動を当初から支えています。

福井大学文京キャンパス

 平成16年の国立大学法人化により、国立大学は以前よりも自由な大学運営が可能になった一方で、「戦略的な経営」や「競争」といった観点がより強く求められるようになりました。
 国からの交付金が年々削減され、少子化により入学志願者数が減少していくことが予想される中、激しい大学間競争を生き残るために、福井大学が選択した方策の一つが、地域への貢献だったと言います。これまでも、教員たちによる福井をフィールドとしたさまざまな研究、教育活動のほか、組織として「地域創生推進本部」「嶺南地域共創センター」を新たに設置するなど、福井という地域との連携を強化することを通して、大学の価値の向上に努めてきました。
 その変革の中で、令和4年に新たな企画を考えるために集められた若手職員の1人が丹羽さんでした。

 「せっかくだから福井大学じゃないとできないことをやろう」と議論を重ねる中で、「地域の課題や魅力に根差した取り組みを職員自らが行う」ことを提案。令和4年にJKKを発足し、一緒に活動してくれるメンバーを公募。令和5年から本格的に活動を始めました。

 活動を始めて2年。「JKKの活動で、成功事例を作り出すことができれば、その知見が他の地域の事例にも生かせ、無限の広がりが期待できる。そして良い取り組みができると、そこに関わった職員や学生もその経験を自信に変えてさらに前向きな気持ちになれる。その前向きな気持ちが大学に大きなエネルギーをもたらし、大学がさらにレベルアップしていけるのでは」と丹羽さんはJKKの活動に大きな可能性を感じています。

 JKKとしての活動をスタートした当初、自治体や企業、地域の人など、いろいろな人たちに大学との連携について言われたのは「教授や学生などとのつながりがない限り、大学に声をかけるのはどうしても遠慮してしまう」という言葉。
 丹羽さんはそうした現状を理解した上で、「大学にはいろいろな人材や知見が集まっており、うまくマッチングができれば、きっと役に立つことができる。まずは、気軽に相談してほしい」と職員が積極的に働きかけることで、大学との連携の抵抗を取り除きたいと話します。

 「地域に関わることができるJKKの活動を今後も続けていきたい。そして、福井大学って学生や教員、職員にとってはもちろん、地域の人たちにとっても良い大学だよねと思ってもらえるようになったらうれしい」

 激しい大学間競争の中での生き残りをかけた福井大学の強い覚悟と、地域との連携を「当たり前」と思う若手職員たちの新しい考え方や感覚の相乗効果で、新しい福井大学に変わっていく転換期を迎えています。

 「大学が地域の課題を解決できるの?」「大学が何をやってくれるの?」と疑問に思っている人は、まずは福井大学を頼ってみるところから始めてみてはいかがでしょうか。きっと、このまちに福井大学があることの意義を感じることができるでしょう。

「福いいナー!をさがせ!」は動画でもご覧いただけます

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福井市広報プロモーション課